八木透 佛教大学教授×コドモト トークイベント

八木透 佛教大学教授×コドモト トークイベント
「記憶に残る体験が繋ぐ伝統文化」

2017年6月24日(土)mumokuteki ホール(京都)で開催した『こどもと行こう祇園祭』キックオフイベント。
企画説明、交流会、マルシェと共に行ったトークイベントの様子をご紹介します。

【対談メンバー】敬称略
八木 透 佛教大学 歴史学部 教授、綾傘鉾保存会理事


山本 安佳里 コドモト主宰、2歳の娘の母


早川 美咲 コドモト主宰、5歳の息子と2歳の娘の母


■「誰もが楽しめる祇園祭」から育まれるこどもの感性

早川 本日は「記憶に残る体験が繋ぐ伝統文化」をテーマにお話しさせて頂きたいと思います。まずは八木先生と祇園祭の出会いについて教えてください。


八木 私はもともと京都生まれの京都育ちで、父親は祇園祭のお囃子をやっていた経験があります。私の母は生粋の東京人で京都の商家に嫁いできた、ということもあり母は京都を良く思っていませんでした。そんな母の影響もあり、私が抱く京都の印象もあまり良くなくて、高校ぐらいまでは祇園祭にさほど興味がなかったんです。ところが民俗学の研究を始めて京都のことを知らずに民俗学はできないと思い、大人になって祇園祭に目を向けるようになりました。最初にキッカケをつくってくれたのは、私の高校時代からの同級生でもあり、現在 祇園祭山鉾連合会の理事をされている大嶋博規さんです。

早川 私の場合は祖父母の家が祇園祭の盛んな四条・西洞院にあったこともあり、毎年必ず祇園祭に行っていました。そういう環境から自分にこどもができても毎年行くものだと自然に思っていました。こどもができて、こどもと祇園祭に行って感じた「楽しいけど子連れは大変」という気付きが今回のプロジェクトの原動力になっています。

早川が幼いころ。祖父と山鉾巡行を見物。

八木 そうですね。本来であれば小さいお子さんも楽しんでもらえる祭でなくてはいけないのに、今はそれが難しくなっている…これは見直しが必要ですね。祇園祭は男中心の祭に表面は見えると思います。実際、女性が乗れない鉾もあります。ただ、祇園祭を歴史的に、また全体的に見た時には、男性だけでは成り立たない祭なんです。こどもにはこどもの役割が、女性には女性の役割が、お年寄りにはお年寄りの役割があるんです。たまたま表に出ているのが男性である、というだけで、みんなが協力しないと成り立たない伝統祭事です。誰もが楽しめる祇園祭、という祭の原点から考えても今回のプロジェクト『コドモト行こう祇園祭』はとても意味のあることなのではないでしょうか。

山本 ありがとうございます。私は京都出身ではなく外から入ってきた者ですが、今2歳の娘が4ヶ月の時に初めて親子で祇園祭に行きました。お囃子の練習を見に行かせて頂くこともあるのですが、家に帰るや否や「カーンチーン」と娘がホーローの器を叩いて真似しているんです(笑) そういう経験を幼い頃にしているかいないかで祇園祭に対する想いが変わってくるんだな、と娘を見て感じました。こどもの頃の原体験は、感性を育みその人をつくる大切な要素になるんだと思います。

はじめての祇園祭をこどもと過ごした山本

八木 確かに、小さいこどもにしか感じられない空気があると思います。大人になったら分からないことをこどもはキャッチする能力があるので、本来の祇園祭の空気感っていうのは小さいこどもにしか分からないこともあると思います。小さいお子さんにも祇園祭を体験してもらって、世界を広げてもらえたら私も嬉しいです。

早川 私の長男は5歳なんですが、先日のプレ親子ツアーに参加した時に、山鉾が全然ない普通の道を八木先生たちにご案内頂いて50人ほどで1時間歩きました。その時に礎石の話をして頂いてから、山鉾町じゃないところでも、道に四角の石を見つけては「そせきー」って息子が言うんです(笑) こういうことからひとつずつ感覚の中にあるものと知識とが合わさって繋がっていくのかな、と実感しています。

プレ親子ツアーの様子鉾町には鉾が建つ目印となる礎石が点在

八木 きっと息子さんは「礎石」という言葉を一生覚えていると思いますよ(笑) 大人になって勉強して学ぶと知識として吸収しますが、こどもは直感で見たことや言葉、すべてを吸収して覚えていく…それって、とても大切なことだと思うんです。

山本 大人が気付いていないことや、そんなところ見てたのということをこどもと一緒に祇園祭を見て歩くことで親も発見があると思います
(※ 親子ツアーの詳細はコチラ )

八木 おっしゃる通り、大人が見るところと、こどもが見るところは全然違うと思うんです。我々が祇園祭に詳しいと思っていても、実際に山鉾を見たお子さんに「何が面白かった」と聞いたら、全然予期していないことや新たな発見を教えてくれるかもしれません。大人がこどもに教えられるというか、大人では見えない、気付かないものをこどもは見つけてくれる、そんな可能性もあると思うんです。

■実はこどもと一緒に祇園祭に行きたいと思っていた多くの親たち

早川 そんなこどもたちにこの素晴らしい祇園祭を伝えていくには、どういうことが必要だと思いますか

八木 コドモトの活動を広めることがまず重要でしょうね。実際に子育てをしている、問題意識を持っている親がプロジェクトを立ち上げて率先している、これを続けることでだんだんと想いが広まって、様々な人の心を動かし、協力へと導いていく。そういう意味でも、ものすごく大きなうねりをコドモトの活動が今起こそうとしているのだと思います。


早川 このプロジェクトを思い立ったキッカケというのが、あかちゃんやこどもとの楽しいおでかけを紹介した本『あかちゃんと一緒 京都おでかけ手帖』を作った時にブログもやっていて、そこで「こどもと楽しむ祇園祭」をブログにアップしたら、その回のアクセス数がすごくあったんです。祇園祭にこどもと一緒に行きたいと思っている親はたくさんいる、ということに気付きました。

八木 先日のプレ親子ツアーも、私は最初少し不安でした。山も鉾もまだ建っていない普通の道をこどもと歩く…そんなツアーに人が集まるのかな、と。でも実際は多くの親子、マスコミの方々にお集まり頂きビックリしました。

プレ親子ツアーに参加したみなさん

山本 私や早川は、本物の山鉾を間近でこどもに見せたい、その見ごたえや意味をもっとこどもに伝えたい、とずっと思っていましたが、「そもそも親子で祇園祭を楽しみたいってみんな思っているのですか」という声もあり不安もありました。でも、プレ親子ツアーの募集をしたら2日で締め切るほど大反響だったんです。そのスピード感に、実はこどもと祇園祭を楽しみたいと思っている親は多いということを確信しました。

八木 こどもたちの感受性もすごいのですが、親たちの知識欲もすごいとプレ親子ツアーで感じました。ガイドで私たちが話すことに興味をもってくださいました。ただ遊びに祇園祭に行くのではなく、祭や山鉾の元々の意味をちゃんと知りたいという願望を持っている方がこんなにも多い、ということをとても嬉しく思います。

プレ親子ツアーの様子

早川 こどもができて、急に社会と分断されてしまったような想いをもっているお母さんもたくさんいらっしゃると思います。コドモトを立ち上げて活動の輪を広げて、親同士や社会との繋がりの輪も広げていけたらいいな、と思っています。

■48年ぶりに復活した「後祭」の魅力

早川 祇園祭の魅力はたくさんあると思うのですが、親子にオススメの見どころポイントはありますか

八木 やはり、見応えのある大型の鉾。それと鉾の上で演奏されるお囃子を間近で聞いて頂きたい。日本中どこに行っても祇園祭でしか味わえない迫力だと思います。お子さんにとっては見上げるほど大きな鉾の真下でお囃子の音色を聞いて、小さいお子さんが何を感じるのか聞いてみたいです。


もうひとつは後祭ですね。前祭も賑やかで素晴らしいのですが、後祭は露店が出ないので、京都の地元の人たちが楽しむ祭本来の宵山を感じて頂けると思います。この3日間は特別な空間に変わるんです。それは行った人じゃないと肌で感じられないこと。“ハレ感”と言うんでしょうか。なんとも言えない空気感をこどもはもちろん親のみなさんも感じてもらえると思います。露店のない室町通・新町通の宵山は独特の雰囲気があるんです。そういうのを五感で感じてほしいな、と思います。


八木 後祭の宵山が排除されたのが昭和41年1966年。私もまだ小学生で当時の後祭の雰囲気をかすかにしか覚えていないですが、そして本来あるべき「前祭」「後祭」の姿に3年前に復活しました。合同巡行が続いた49年間、それしか見てない人は露店のある宵山しか知らないと思います。後祭では露店は出ませんが人もそこまで多くなく、京都人が愛した昔ながらの祭が味わえるのです。後祭の宵山風情を味わえるなんて、幸せなことだと思いますよ。

☆豆知識☆
1000年以上にわたって継承されてきた前祭・後祭の習わしを後世に正しく伝えていくため、昭和41年(1966年)に合同化されてから約半世紀ぶり、平成26年2014年に山鉾巡行の「前祭」(7月17日)「後祭」(7月24日)が復活しました。
■前祭(さきまつり) 宵山行事7月14日〜16日 巡行7月17日
■後祭(あとまつり) 宵山行事7月21日〜23日 巡行7月24日

早川 こどもと安心・安全に祇園祭を過ごせるように、こどもに祇園祭の素晴らしさ、文化・伝統を伝えていけるように『こどもと行こう祇園祭』プロジェクトを進めていきたいと思います。

八木 そうですね。安心・安全に、そして何よりも親子で祇園祭を楽しんで頂ければと思います。みんなでそれを実現していきましょう。

『こどもと行こう祇園祭』実行委員のみなさん